漬物豆知識

お漬物は、野菜を長期保存するために考えられた加工法です。
 古代、中国や朝鮮から日本に野菜の栽培法が伝わったのと同時に、保存方法として漬物も伝わったという説があり、かなり古くから作られていたと考えられ、その起源は明らかではありませんが、一説では縄文時代から作られたとも言われています。海水を使って作られていたと考えられる鹿児島県の壷漬(現在では山川漬)が、海水を使った製法として有名です。

 記録に残されている最古の漬物は、奈良時代、天平年間(729~749年)の木簡(墨で木札に文字などを書き、送り状や文書に使用したもの)に記されている「うりの塩漬け」です。さらに、この天平から神護景雲を経て、宝亀〈780頃〉にいたる奈良時代には、この他、食物雑物納帳、食料下充帳などにも多くの漬物が見られます。そして、奈良時代の多くの漬物を、総合的な製造法として示したのが、醍醐天皇の延喜5年に編集が始まり、25年目の延長8年〈930〉に進献された『延喜式』です。『延喜式』には塩漬、醤漬、糟漬、楡木〈ニラギ〉、須々保利、搗〈ツキ〉、荏裹〈エツヅミ〉の7種類が記載されています。

 中世に入ると、漬け物はいっそうの発展を遂げ、室町時代には「香の物」という言葉が使われるようになります。そして江戸時代には糠漬けも登場。「香の物屋」といわれる漬け物屋も誕生し、漬け物はいよいよ庶民の間に広まっていきます。
 こうして江戸時代初期に製造方法や商売の基礎ができあがった漬け物は、近世に入ってさらに発展。今日では健康志向をとらえ低塩で漬ける製造技術も開発されるなど、進歩をとげてまいりました。


お漬物と食塩について

「つけものは塩分が多い」そう思っていませんか?
実際に白菜漬けを例にとって調べてみると、 白菜漬けの塩分含有量はおよそ2% なので、1gの食塩を取るためには50gが必要ということになります。これは、だいたい小鉢に山盛りです。 ちなみに、 インスタントラーメンをスープまで飲めば約6g、ラーメン店のラーメンだと約8gの塩分が体内に入ったことになります。 厚生労働省による日本人の成人1日あたりの理想摂取量が10gですから、お漬物が塩分の取りすぎの原因となるとはあまり考えにくいことです。さらに最近ではうす味が好まれることからどんどん低塩化しています。
だからといって、お醤油をどんどんかけるなんてことはしないでください。そのままでもじゅうぶんおいしくたべられますから・・・。
 
 

お漬物と健康

たくあんを噛んで集中力を
日米野球を見に行くと両軍選手がガムを噛んで投球しガムを噛んでホームランを打っています。
ここでのガムを噛む効果は実験的に証明されておりガムを噛むと脳の活動性が上昇、集中力が持続するのです。
この他、噛む効果は口腔衛生効果、口臭除去から糖尿病由来の口腔疾患を防ぎ精神安定に役立つと言われます。そして究極の効果は知能の発達と関連しているのです。
同志社大学の西岡一教授は食物に発ガン性があっても唾液が抑制するので唾液をだすため30回のそしゃくをすすめています。また、そしゃくは歯と歯の噛み合わせをよくするとともに胃の負担を軽くします。日大医学部の赤坂守人教授は「噛むエネルギーによる食物分類」を発表して最も噛む効果が出るのは「たくあん」としています。

 

乳酸菌で、おなかの掃除
おつけものは古くなると酸っぱくなりますが、これはけっして腐ったのではなく、 発酵が進み、乳酸菌が増えてくるからです。そう、おつけものにはもともと多くの 乳酸菌が含まれています。
 中央アジア地方ではガンが少なく長寿が多いのですが、それはヨーグルトなどの乳酸飲料をよくとっているからではないかと言われています。こうしたことから、 近年健康を維持する乳酸菌の働きが注目を浴びるようになりました。
 その働きの主なものをあげてみると……。

1.腸内の雑菌を清掃してくれる
2.ビタミンをつくる
3.カルシウムの吸収を補助している
4.さわやかなお通じをつくる
5.発ガン物質の分解に関わっている

 そして、こうした乳酸菌を多く含むのが、発酵によるおつけものなんです。 発酵乳に含まれる乳酸菌は1g中1億個程度なのですが、おつけものの場合は1g中10億個、しかも 酪農乳酸菌(ヨーグルト)は腸内に到達しないのですが、漬物菌は腸内棲息が可能です。
 なかでもすぐき漬は、まったく味付けしていない超自然発酵食品。これら おつけもののおかげで、私たちは毎日健康をおいしく食べることができるのですね。
 おつけものに含まれる乳酸菌でおなかを洗濯。美容に、健康にいかがですか。


お漬物の分類

漬物がつかるということ
動植物の細胞は、細胞膜に囲まれて、安定した組織構造になっています。これが食塩、砂糖などの溶液に触れると、その浸透圧で組織構造が攻撃を受け、細胞膜の防圧機能が破壊され、内からも外からも通ずる膜に変化します。
この細胞膜の壊れたところから、細胞内に食塩が入る現象を『漬かる』といいます。細胞膜破壊が3~4割の場合は浅漬、7割以上でよく漬かった状態になります。
 
野菜風味主体の漬物
 破壊された細胞膜を通って、食塩が細胞膜に入り込み、なかの糖、遊離アミノ酸、AMP〈核酸関連物質〉、有機酸、香辛成分と混和して、内部で一種のスープを形成し、野菜の歯応えとスープの味を楽しむ1群の漬物があります。
「野菜風味主体の漬物」に分類され、浅漬・菜漬がこれにあたります。業界用語で『新漬』、俗に言うお新香です。この分類には、果物を使った梅漬・梅干も入ります。
 
野菜風味に発酵味の加った漬物
スグキ、しば漬やぬか味噌漬のような、乳酸菌の関与する乳酸発酵漬物やたくあんのような、酵母の関与するアルコール発酵漬物は、前述のスープの糖分が、微生物の発酵により味と香気が変化して、スープ内容物が複雑になったものです。
日本では『伝統漬物』のイメージの大きな漬物ですが、量は多くありません。しかし、ヨーロッパや中国では、この種の漬物全盛で、サワークラウト・ピクルス・泡菜〈パオツァイ〉・酸菜〈スワンツァイ〉とよく食べられる上に、料理の酸味料として、アルザス風シュークルートのように使われています。
 
調味料の味の主体の漬物
福神漬や甘酢生姜〈ガリ〉のように、野菜の出盛り期に強い食塩によって細胞膜を壊し、塩度20%の高塩スープの状態で長く塩蔵したのち、需要に応じて流水で高塩スープを流してしまい、残った野菜組織に外部から醤油や甘酢調味液等を浸し込ませた漬物は、野菜の風味より調味料の味が、漬物の味覚になっています。
この種の漬物は、調味漬と呼ばれ、業界用語では『古漬』といわれます。味噌床や粕床に同様の、塩を除いた野菜組織を漬けた味噌漬、粕漬もこの分類に入ります。調味液や床の味覚資材の配合で種々の漬物ができ、その配合の巧拙が味覚の出来を支配します。